古代集落の構造と変遷1
|
奈良文化財研究所では、1996年から古代官衙と集落に関する研究集会を継続して実施してきました。この研究集会は、律令国家に関連する様々な遺跡(遺構・遺物)を対象として毎年一つのテーマを設定し、全国の官衙や古代集落に関心のある考古学・文献史学・建築史学・歴史地理学など諸分野の研究者が一堂に会し、学際的な観点から熱い議論を交わす場となっています。 今回から「古代集落を考える」と題するシリーズを立ち上げ、古代集落を対象として複数回に分けて議論を重ねることとしました。古代集落は遺跡数も多く、膨大な発掘調査の蓄積があります。集落遺跡の検討を通じて、律令国家における在地社会の実像を明らかにすることにより、都城、集落のみならず両者を結ぶ地方官衙の有機的な関係の解明に繋がり、律令国家や古代社会の歴史的特質を明らかにできるものと考えられます。 昨年度の第24回研究集会では、現在の集落研究の到達点を確認するとともに、「集落構造」をキーワードとして、近年調査が進められてきた集落遺跡を対象として研究報告と討議がおこなわれ、有意義な成果をあげることができました。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、残念ながら研究集会の日程を短縮し、オンラインでの参加をお願いするなど様々な制約がある中での開催となりましたが、それでも多くの方々に参加いただきましたことに対し厚く御礼を申し上げます。 この度、その研究成果をまとめた研究報告が完成し、皆様にお届けできる運びとなりました。本書の執筆に当たられました研究報告者をはじめ、研究集会に参加された皆さまに深く感謝申し上げるとともに、本書が広く活用されることを期待しております。 今後とも、古代官衙・集落研究会の活動に対して皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。 2021年12月 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所長 本中 眞 |