地球環境の心臓 赤道大気の鼓動を聴く
 本日はご多用のなか、かくも大勢の皆さまにお越しいただきまして誠にありがとうございます。関係者を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 さて本シンポジウムのテーマは赤道大気ですが、赤道大気と申しましてもおなじみのない方が多いのではないかと存じます。また、タイトルに「鼓動」とありますが、赤道では大気が人間の心臓のように脈打っているのか、といぶかっておられる方もおられるかもしれません。結論から申し上げますと、赤道大気は大変激しく鼓動しています。その原因は、赤道を出発点とした地球規模の大気運動のポンプが赤道にあり、そのポンプが激しくはたらいていることによります。そのような赤道大気の振る舞いが、私たちが住んでいる中・高緯度地域の大気にも大きな影響を及ぼすことが、近年、いろいろな研究で明らかになってきました。私たちは赤道から遠く離れた日本に住んでいるからといって、赤道域のことに無関心でおられなくなってまいりました。今のうちに赤道大気をしっかり調べておかないと、将来、地球の大気環境が大変なことになる恐れがあります。そのため、世界中の研究者が今、赤道大気をさかんに研究しています。
 私たちも文部科学省のご支援をいただき特定領域研究『赤道大気上下結合』で、赤道大気の研究に挑戦をしてきました。本日はその成果の一部を皆さまに聞いていただくため、本シンポジウムを企画いたしました。
 文部科学省は比較的大型の研究を特定領域研究として支援しておりますが、その対象となる研究領域は、わが国の学術研究の水準向上・強化につながるもの、地球規模での取り組みが必要なもの、社会的要請の特に強いものなどです。厳しい選考を経てそれに採択されますと、研究を機動的に推進し、格段に発展させることが求められます。幸い、私たちの研究領域は平成13年度に採択され、平成18年度までの6か年間継続させていただきました。研究を推進いたしましたのは、京都大学をはじめとして名古屋大学、島根大学、首都大学東京、東京大学、弘前大学、北海道大学、大阪電気通信大学、および(独)海洋開発研究機構と(独)情報通信研究機構の研究者が中心です。本シンポジウムは、この研究に参画した研究者と、領域外から国際的に著名な3名の研究者にお願い致しまして、赤道大気上下結合の最新の話題と、本特定領域研究で明らかとなった最先端の研究成果を、できるだけ平易な言葉で皆さまに聞いていただこうと思っております。是非、お楽しみいただきたいと存じます。本日はご来場いただき誠にありがとうございました。
深尾 昌一郎  京都大学/東海大学